ha ha ha 考える歯

「卒業した歯医者めぐり」 日下 公人さん(三谷産業株式会社監査役、多摩大学名誉教授)

 田北先生のクリニックは、子供の頃から通いなれた歯医者さんのイメージとはぜんぜん違っている。
 田北さんの暖かい人情と深い教養とそれから歯についての学識と熱意とさらには優しいスタッフに迎えられて、治療台に座って目をつむると、何もかもオマカセで安心という仏教で言えば安心立命で極楽住生のような気持ちに誘われる。
 何もかも田北さんがつくり上げたものである。

 私の歯とそれから私の身体全体のためにこうして上げようと思って作って下さったのだと思うと仇やおろそかには診察を受けられない。
 本人の私は自分の歯なのに随分と粗末に扱ってきたものだという反省がつぎからつぎに涌いてきて、田北先生にはその後始末のご迷惑をかけて申し訳ないような気持ちになる。

 すみません すみません、という気持ちになって診療台の上で小さくなっていると先生が”どれどれ”と口の中を覗いて下さる。
 一目診れば何もかもお分かりらしいということが、その”どれどれ”と言う言い方からも感じとれてますます安心である。

 やがて治療がはじまるが、痛くないように、痛くならないように、という細心の心づかいと技術の粋が感じられて逆にこちらも たとえ痛くても痛がらないようにしようとひそかに決心したりする。
 そんなことで書いていくとキリがないが、つまりは患者の方もいろいろ感じているのです。先生。

 田北先生を紹介して下さったのは多摩大学名誉学長の中村秀一郎先生である。
おかげで少年以来の歯医者さんめぐりは卒業になり、その上”歯を美しくする”ことまでしていただいた。
 歯をよくすると身体も心もよくなるというのはホントでした。